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INTERVIEWギターとわたし

ギターや音楽を愛する、メルカリグループ社員にギターにまつわる話を聞いていくインタビュー企画です。

聴くことの大切さ──斎藤明子さん(日本ジュニア・ギター教育協会会長)/篠田真貴子さん(エール株式会社取締役、株式会社メルカリ社外取締役)

番外編 2021年4月19日

おふたりの現在の活動をおしえてください

斎藤:クラシックギターの演奏と指導をしています。演奏活動や指導のほか、日本ジュニア・ギター教育協会の会長として、お子さん向けのコンクールを主宰しております。

篠田:メインはエールという社外人材によるオンライン1on1を提供する会社の取締役をしております。他にはメルカリの社外取締役、NPO法人の理事なども務めています。

斎藤:篠田さんとは中学、高校と同じマンドリンオーケストラのクラブに所属しており、私の方が1年先輩になります。

篠田:斎藤さんはめちゃくちゃカッコいい先輩だったんですよ、マンドリンクラブ以外にも学園祭でエレキギターを弾いたりしていて。制服もちょっとお洒落に着こなしていましたよね(笑)

斎藤:4歳からクラシックギターをはじめて、高校1年修了と同時に1年間スペインにギター留学をしたんです。帰国後タガが外れ、普通の学生生活に疑問を持つようになって...(笑) 学校に行かずに家でギターの練習をしたり、授業に出ても机を叩いてリズムトレーニングをしたり… 先生方にも心配をおかけしましたが、卒業式の謝恩会で演奏する機会を頂き、そこでご理解いただけました。

今回は篠田さんがエール株式会社で提唱されてらっしゃる「聴くことの大切さ」についておふたりに伺えればと思います。ビジネスでの対人関係同様、音楽でも「聴く」というのはとてもむずかしいことと思いますが、日頃から心がけてらっしゃることはありますか?

斎藤:音楽のレッスンではどの楽器のどの先生も「あなたが出してる音を、自分でしっかり聴きなさい」と指導します。それさえできれば先生は必要ないのですよね!(笑)

最初は弾くこと自体に必死ですが、だんだん作曲家の意図を想像するようになり、そこに自分なりの解釈が生まれます。こうして楽器を通して自分と音楽とのコミュニケーションが始まるんですね。そこで楽譜にとらわれすぎて自分を殺してしまったり、逆に自分を出しすぎてしまったり...そのプロセスはビジネスの人と人とのコミュニケーションも同じかもしれませんが...。

演奏する時は自分の良い様にしか自分の音楽を聞いてない事が多いので、そこを先生は客観的に指摘していくんですけども… これが難しいんです(笑)

篠田:なるほど、それって本を読む行為に似ていますね。本には著者の意図が込められているのですが、自分の状態によっては拾い読みになってしまって、都合の良い所だけ読んでしまう。独りよがりの演奏と似ていますね。ただ字面を追うのではなく、著者の意図への意識が及ぶと字面の捉え方が変わってくるんです。

人の話を聞くのもそれに近くて。自分の余計な判断を挟まずに、相手には何が見えているのかな、という興味で話を聞くと、幅が広がるんです。

自分にとってリアルに感じると相手の話を受け取れる量が増えますし、それは話す側も伝わるので、どんどんと話が出てくるんですよ。結果として上手く言語化できていくので自己理解が深まるんです。

斎藤:やっぱり最終的にはコミュニケーションなのですね。音楽も一緒ですね。客観的に自分の音楽が聞けていないと、何の為に弾いているのかわからなくなる時があるんですよ。自分の喜びにも聴く人の喜びにも繋がらなくなるんです。それは良いコミュニケーションとは言えませんものね。

篠田:斎藤さんも演奏を聴いてそれはわかりますか?

斎藤:初めは教える際に「ジャッジをしなくてはいけない」と思っていたんです。それを生徒さんの目線に切り替えて聞くようにしたら、急にその人の中での問題点がわかる様になったんです。

もう一つ、音楽を聴くという行為の中で、忘れられない体験があるんです。好きなオーケストラを生で観に行くことになり、ほんの些細な情報も聞き逃したくなかったがために楽譜を確認しながらきいていたのです。ところがいつの間にか放心状態になって...

そして最後の音が止んだ瞬間自分の全てを受け止めてもらった!という様な不思議な感覚になったんです。会話で言えば、一語一句を聞きに来たはずが、聞いてもらった気になるなんて... その一瞬、拍手も起こらず、会場全体がシーンとなったんですよ。今思えば、音楽と云う媒体を通して、会場中の全員が、指揮者、奏者、聴衆など関係なしに、質の高いコミュニケーションを持つことができた時間だったのかもしれません。

篠田:わあ、素敵なお話しですね。仕事でも、会社の中だけではなく、お客様とも一緒にサービスを作っていく感覚って大事だと思うんですよ。

仕事をしている事が尊くなる、原動力となる体験を作っていく。自分の意識を役割に固定する事は簡単なのかもしれないですけど、役割って機能じゃないですか、そこに止まると感動は薄くなってしまいますよね。色々な思いの断片を捕まえて自分の価値観に繋げていけると良いですよね。

コロナ環境で何かはじめた事はありますか?

斎藤:仕事としての音楽の準備から解放されて、一から音楽を勉強しましたね。それこそ16才の時にスペインで教わった事を再度見直したりして、その時は気づかなかった発見がありました。

篠田:丁度仕事をまた始めたタイミングだったので、子供がふたりいるんですが、お昼は自分でやってもらうようにしました。私にとっては、はじめた事というより手放した事ですね。子供たちは、段々と動画やレシピサイトを色々調べる様になってきて(笑)

すっかり子供たちが料理が好きになりまして、春休み期間もお昼は自分で作るが定着しました。

ギター(音楽)の魅力は?

斎藤:まず扱いやすいところがいいですね。パッと買える値段で日本の住環境にも合っていると思います。

クラシックギター に関して言えば、結構自由な世界なのが魅力です。ピアノやバイオリンだとメソッドが多いですが、ギターは固定のメソッドが無いんです。はじめた段階から自由、時代の解釈もとても自由です。バッハはこう弾かなければ!みたいな縛りも無いんですよ。レパートリーが少ないので、クラシックギタリストは他のジャンルも多少弾けないといけない、ということもあって視野が広い人が多いですね。

篠田:伴奏もメロディーも1人でできるのは大きいと思いますね、それができる楽器は少ないので独学で始めても楽しめると思います。

ビジネスの世界はロジックや数字で決まる面白さがあるんですが、音楽はよりダイレクトに自分の感覚に入ってくるので、正直今の私には音楽くらいしか自分の生っぽい感覚を開放する事って無い気がするんです。

ギターに関するお気に入り/思い入れのある曲を5曲教えて下さい

斎藤:
マヌエル・ポンセ / エストレリータ
エンリケ・グラナドス / スペイン舞曲第5番
Doc Watson/Black Mountain Rag
Lester Flatt and Earl Scruggs / Foggy Mountain Breakdown
Phil Collins / Don’t Lose My Number

篠田:
Earth, Wind & Fire / In the Stone
Fourplay / Between the Sheets
The Style Council / My Ever Changing Moods (piano version)
Michael Jackson / Billy Jean
Daft Punk / Get Lucky

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番外編 2021年4月19日

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